君と歩いていく道
のろのろとリビングへ歩くのは、本当は母の話など聞きたくもないからか。
どうせ、引きこもっている自分を責めに来たのだろう。

(・・・やだな。)

まるで小さな子供のように、泣き叫んで拒否をしてみれば、聞かなくてすむのならそうしたい。
しかし、そんなことをしても無駄だと、すぐに
頭は否定した。
自分の方が体格に勝った今でさえ、彼女が怖い。
幼い頃からの記憶は根深く、なかなか克服出来ないでいる。

「座りなさい。」

先程まで寝ていたソファーに母が座り、その向かいに座らされる。
母を目の前にすると、緊張からか自然と背筋が伸びた。

「毎日あなたは何をしているかわかっていますか?楽団に迷惑をかけ、それでも引きこもっている理由を言いなさい。」

真っ直ぐ射ぬいてくるような視線から逃れるように、うつむいたら震える拳が映った。

理由を言えと言われても、そんなものはない、
ただ、ピアノが弾けない。
それだけだ。
だが、そんな答えでは納得するはずもない。
自分だって、いつまでもこのままで良いと思っているわけではないのだ。

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