君と歩いていく道
言葉も出てこない。
正論だ。
正論だが、胸が苦しい。

「ピアノしか無いのなら、弾きなさい。弾けないのなら、他の仕事をしなさい。」

私は間違ったことを言っていますかと、母親の視線が痛い。

「スポーツ選手との恋愛など必要ありません。これ以上、真崎の姓を汚すような真似は控えなさい。」

「そんな時代錯誤な考え方・・・。」

「それで結構。」

ぴしゃりと言い放たれ、予定表を持つ手に力が入る。
どうしたらこの人から解放されるのだろうかと、頭のなかはそればかり考えていた。

「まずは身なりを整えなさい。仕事をこなせるようになれば、そのうち身を固めてもらいますから。」

それしか貴女には利用価値がありません。

暗にそう言われている。
音楽家同士の横の繋がりを強化したいと、玲が幼い頃から聞かされてきた。
幼馴染みである水瀬信吾も、それで出会ったのだ。

睨み付けることさえ出来ない自分に対して、情けない気持ちで心が一杯だった。

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