君と歩いていく道
彼ほどの男ならばすぐに新しい恋人が出来るだろうし、自分よりも魅力的な女性なんてそれこそ星の数ほどいるのだろう。
だから、どうか元気にテニスを続けて欲しい。その姿をテレビで見られるだけで、それで十分だから。
全ては自分の親の勝手だが、回避できなかった自分が悪いのだ。
母を乗せて走りだした車から外を見ても、もう自分がどこにいるかなどわからなくなっていた。

平日だけあって閑散とした空港に降り立った真崎は、もう何も見たくないと眼を伏せた。
眼を伏せて母の足だけ追って行けば、色彩を欠いた全てを見ずに済むのだと。

「明後日お会いする御子息はね、森野さんの息子さんなのよ。しっかりなさい。」

森野家も真崎家と同じ音楽一家で、真崎と同い年の一人息子がいた。
彼とは何度かセッションしたこともあって、別に知らない人間ではない。それがせめてもの救いなのかどうかは別として。

搭乗口の待合に座りながら、常なら好奇心で離陸着陸する飛行機を見ているのだが、何も見る気が起きなくて、真崎は泣き腫らした目を閉じた。

「玲!」

聞きたかった声は、耳をすり抜けて音になった。

「なんですか、こんなところまで。貴方と玲の関係はもう切れたはずですよ。」

「切った覚えは、ありません。」

「小母さま、考え直してください。」

ふと顔を上げれば、会いたかった人と、頼りになる幼馴染。

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