人魚姫と海の涙
口は相変わらず、すらすらと言葉を放ち続けているけれど。


もう、目の前にいるはずの彼の姿は見えてはいない。


もしかしたら、とっくに私の話に飽きて立ち去っているかも。


それでも、私は語る。


「それでさー、色んな所行ってわかったんだけど。


世界って、やっぱりおかしいし、甘くないよ。


そう思わない?


ん、思ってくれるんだ。


義妹にも聞いたことあるけど、あの娘はなぁ………」


ふ、と息を吐くと隣に体温を感じた。


目を凝らすと彼が私の隣に座っているのがぼんやりと見える。


真っ黒な目が、続きを求めて鈍く光った。
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