人魚姫と海の涙
「そいつ、人間?」


きょとん、と首を傾げる彼には悪意も殺意も一切見られなかった。


ほっとして力を抜いたのが失敗。


剣を持った腕を捕まれ、口を押さえられてしまう。


「綺麗な短剣だな。で俺を殺そうってつもりか、鈴?」


冷たく、凍りそうな声。


くるり、と手を捻られると短剣はからん、と音を立て床に落ちる。


器用に口を押さえたまま彼は短剣を拾った。


「水晶、あとはターコイズか。うっわ、高そ。


俺さ、お前のこと殺さねえって言ったけど、俺を殺そうってなら別なんだぜ?」


柄の装飾を指でなぞり、そのまま私の頸動脈に指を走らせる。
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