人魚姫と海の涙

彼女の名前はシエルと言いました。


シェル、貝殻。


その名前を持つ彼女は勝ち気で、思いやりがあり。


姉達の中でも特に、死んだ妹を深く愛していました。


そんな彼女は毎年、妹が死んだ日には小さな小島から人の住みかを眺めることにしていました。


泡になって、何一つ残らなかった妹を悼むため、彼女は幾年も島に上がり続けたのです。


人魚姫が死んだ日は王子と隣国の姫が結婚式を挙げる前日。


毎年のように、王子と彼女との結婚を祝うパーティーを人は行っていました。


シエルはそのパーティーをいつも遠くで見守っていました。


大切な妹の想いに気が付かなかった愚かな人間、と王子を蔑み。


恨みながら毎年、毎年見守っていました。


妹が死んだというのに笑顔で話し、酒を飲む彼らが憎らしかったのです。


そうやって、パーティーを見つめるのに夢中になったのが間違いだったのでしょう。