人魚姫と海の涙
何故ならば、


「私を捨てた彼でも私が彼に抱いた想いは本物で、


腹の子は唯一の彼と私の思い出の結晶だから。


それに、この子に罪はありません。


悪かったのは、愚かな私だけ」


ボロボロと涙をこぼしながらシエルは言いました。


「だから、お願い。


この子が人として生きても、人魚として生きても。


二度と辛い恋をしないように。


幸せに生きれるように」


純粋だったシエルの願いは歪んだ魔女にも届きます。


魔女はにやり、と笑ってその願いを聞き届けました。


「約束しよう。


そなたの子孫が人として生きても、人魚として生きても。


辛い恋をしないようにわしが見守ることを」
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