人魚姫と海の涙
私はずっと、それまでの十年間。


自分が人間だと思って生きてきた。


きっと、一月前の私だったら迷いなく人間って答えたと思う。


でも、私は知ってしまっていた。


人間はある日人間じゃなくなるかもしれないことを。


だから聞いた。


「私はどっちになったらいいの?」


綺麗な髪の人魚さんは困ったように私を見た。


きっと私がなんの説明も受けてなかったことにびっくりしたんだと思う。


普通こんな事は事前に誰かが教えてくれる。


でも、優しく微笑んで言ってくれた。


「ならば、今日一日は人魚としての暮らしをして、それから決めたらどうでしょう?」
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