人魚姫と海の涙
「そう、ですか」


人魚のお姉さんは少しがっかりした表情をした。


「残念です。


あなたが人魚になってくれたら、良いお友達になれたんでしょうけど。


それがあなたの選択なのですね?」


「はい。これが、私の選択です」


人間になってしまう私には、心ちゃんの事を救ってあげることは不可能になる。


でも、助けてあげられなくても。


死ぬときに、寂しい思いをしないよう、手を握ってあげられるのは、人間だけ。


「じゃあ、今からあなたの身体から人魚としての力を奪います。後悔、しませんか?」


再びお姉さんは事務的な口調で問うてくる。


「……………っ」


一瞬の躊躇いが顔に出た。


私が人魚になれば、心ちゃんを救えるっていう思いが、私の決心を鈍らせる。
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