人魚姫と海の涙
私の躊躇いの意味を理解したのか、人魚の彼女が遠慮がちに声をかけてきた。


「実は、私ならズルが出来ます。


今、あなたの姉妹を助けるために私が涙を渡しても、それはすぐに溶けるでしょう。


でも」


彼女は決心を迷うように顔を伏せた。


「でも、あなたを人魚姫にすることは可能です」


訳がわからなかった。


人魚姫になる、なんて言われてもどういうことなのか。


でも、それを言い出した彼女が辛そうにしていることから、それが決して素晴らしい選択ではないことはわかった。


「私の提案を飲んだら、あなたは一生。誰にも恋することが出来なくなります。


それでも、この選択を取りますか?」


取るか、そう問いかけながらも、取らない方がいいと言いたげな視線。


それでも、答えは決まっていた。
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