俺の蕾ちゃん
帰っていいよと俺に言ったブサコ。
俺が祐未ならさっさと帰っただろう。
でも、俺は祐未じゃない。
「 やるからいいよ、一人でこれは無理だろ 」
カート三台分もある貸し出されて戻った本の山だ。
「 ありがとう 」
ありがとう?二人でやるのに礼なんか言うのか…
「 あんたさ、名前なんだっけ?」
悪いとは思ったが聞いてみた。
ブサコなんて呼べないしな…
「 玉置 …南海 (みなみ) 」
「 わかった、さんきゅ玉置 」
玉置は赤めの鼈甲の眼鏡をしている。
度がキツいのか、目が点ののように見える。
よくある話だが、眼鏡外すと綺麗だったり?でも、祐未が言うには見ない方がいいと言う。
だからブサコなのか?
誰だってコンプレックスがあるはず。
ブサコだからって祐未の言うことは気にしなくていいと思う。
「 玉置、上の方の… っていない 」
上の高い所へ入れる本は俺がやるからと言おうとしたら、いない。
静かな図書室。
カタッ… 音がした。
音が気になったが玉置だろうと思いきにしなかった。
ひたすら本を片付けては移動していく。
さすがに決まった動作の繰り返しも疲れて休憩しようとその場に座り、棚にもたれて本を眺めていた。
ふと気づけば、棚の隙間から ゆっくりだが、マメに動く玉置の姿が見えていた。
玉置か… そんな真剣にやらなくてもな~
時には椅子を持ってきて立ち上がり、本を入れている。
俺は本を片付けているより、玉置の動きを見ている方が何となくおもしろく感じた。
椅子に登って、本を入れようとした瞬間、手が止まり… クシュン!とくしゃみをした拍子に本が落ちる。
ぶっ… くしゃみで落とすとは。