俺の蕾ちゃん
ブサコが可愛いと思った瞬間、見えたものは何なのか、恋だ。
いつも祐未の顔を見ているせいか、無意識にでも祐未の顔が基準となり可愛いの範囲がせばまってしまっていた。
クラスには名前すら思い出せない奴もいるのに、玉置でさえ俺は本当の玉置を見たんだ。
逆にコンタクトにされたら困るのは俺だという事に気づくとブサコに変身してしまった玉置はこれでいいんだと思う。
ただ、何か足りない。
ブサコだけど、俺にはブサコではない。
そんな玉置を見ていると、玉置が椅子を台にしてまた登って立つが、図書室には脚立がある事を玉置は忘れている。
必死で揺らぎそうな椅子につま先立ちする様子に笑えてしまう。
脚立がある事は内緒にしておこう。
見てて指先すら届かない玉置の後ろから俺は抱き込むようにして狭い椅子に立ち、玉置の伸ばす腕をたどり、本をしまってやる。
すると、ありがとうと俺に向き直ろうとしてグラつく玉置を支えようとしたが、玉置の方が俺に寄りかかったために、椅子からバランスを崩し落ちてしまった。
背中に鈍い痛みの衝撃がきたが、玉置が俺に寄りかかったおかげで抱き止めながら落ちたから玉置は無事だ。
「 …つ、ってぇ」
「 伊佐木くんっ!? や、ダメ!死んじゃダメーっ 」
こら、勝手にやめろよ、それ…
「 玉置… 髪で顔見えない 」
落ちた拍子にシュシュが取れて俺にかかる髪で玉置の顔が見えない。
柔らかい髪だな~ なんの匂いだ?
「 大丈夫なの?」