君には聴こえる
私は期待を胸に、大学に通い始めた。
もしかすると、構内で彼に会えるかもしれない。偶然の再会なんて、ロマンチックなことを想像しながらの大学生活。
構内を散策する際には、いつも彼の姿を探した。音楽系のサークルを見て回ったりしたけど、彼は見つからない。
さらに、彼の歌っていた駅前にあるファストフード店でアルバイトを始めた。自宅から大学へは電車通学で、この駅はちょうど途中下車できるから便利だったし。
アルバイトを終えて帰る頃は、ちょうど彼の歌っていた時間になる。いつも期待しながら噴水の前見たけど、彼はいない。
少し時間を変えてみたり、噴水の前だけでなく駅前をぐるりと歩いてみたり。コンコースの中の柱にもたれて、待ち合わせを装って噴水の前を睨みつけたり。
それでも諦めきれなかった。