君には聴こえる


いつの間にか、駅のコンコースの中にある駅下デパートの出入口の両脇にはクリスマスツリーが飾られていた。


初めて彼に会ったのは、去年のクリスマス。思い出したら悲しくなって、クリスマスツリーの前で足を止めた。


自動ドアが開くたびに、店内から楽しそうなクリスマスソングが漏れてくる。コンコースの外から吹き込む風に乗り、微かな歌声が聴こえてきた。


違う、彼の声じゃない。
噴水の前で歌っているのは、彼じゃない。


もう、彼とは会えない。
覚悟の言葉が、頭に浮かぶ。


勝手な思い込みから生まれた片思い。
ケリをつけるのは自分自身しかいない。


彼とは縁がなかったんだ。


言い聞かせて、クリスマスツリーを見上げた。


今にも天井に届きそうな金色のトップスターが、滲んでいく。


やっぱり、好きだった。


< 15 / 22 >

この作品をシェア

pagetop