君には聴こえる
♪ 出会えた奇跡
あなたと出会ったのは、今から六年前のクリスマスイブの夜。
私は高校三年生で受験生。
この駅前の塾に、毎日電車で通っていた。週三日の通常授業に加えて、連日の補習授業。
先生や親は今のレベルよりもワンランク上の大学を勧めるけど、私は既に疲れてた。本当に行きたい大学は射程圏内だから、今のレベルをキープさえしていればと思っていたのだけれど。
そんな甘い事を親が許してくれるはずもなく、言われるがまま塾通い。
正直、疲れてきっていた。
塾が終わると十時近くになっていて、駅へと急ぐのは仕事帰りのビジネスマンばかり。彼らに紛れて、重い足を引き摺りながら駅のコンコースへと入っていく。
コンコースの中で真っ白な照明の下にありながらも、さらに眩く浮かび上がる大きなクリスマスツリー。ちらり見上げた私の髪を、冷たい風が駆け抜けてく。
一緒に運ばれてきたのは優しい歌声。
私は足を止めた。