平凡な憂の非日常
「でも、実家とかに帰った方がいいんじゃないかな?」
恥ずかしさを隠すために
リナを少し押しながら言った。
また、いままでのように
「ウチと住むのが、そんなにいやなんか~!」
とか言われるかと思っていたら、リナは
「ウチ、実家がなくなってしもてん」
と明るくもなく、ふざけてもいない口調に
まずいことを聞いてしまったような気がした。
・・・。
「さぁ、新しい生活の門出なんやし
おいしいもんでも食べようや」
いつもの明るいリナの声に
僕は促されるままに席に着いた。
冷蔵庫から出してきたビールをお互い持って乾杯を
「ハッピーバースデー」
「乾杯」
???
いきなり門出からつまづいた感じの二人の乾杯。
「そういえば
タンスから出てきたときもそんな事を言ってたようだけど
なんでハッピーバースデーなの?」
リナは、小さく溜め息をしながら首を横に振る。