平凡な憂の非日常

「黙って引っ張ってくれる人、ウチ好きやわ~」

てくてくてく。

「…ちょっと返事くらいしたらいいやんか?」

てくてくてく。

「……自分、童貞やろ?」

ピタ。

「なんでついてくるんですか?

止めてもらえないですかね?」

すると女は急に泣き出して

「ウチみたいな女の子が独りで困ってるのに

無視してばっかでホンマ東京者は冷たいわ~」

わんわんと号泣しだした女に僕は困りながらも

「近所迷惑だし、とりあえず泣かないでください。

どうかしたんですか?」

と優しく声をかけ女を諭そうとした。

「もう無視せぇへん?」

「しませんよ」

「ウチを置いて家に帰ったりせぇへん?」

「しませんよ」

「ウチを襲ったりせぇへん?」

「しませんよ」

「ウチは女として、魅力ないんや~!」

声量アップで号泣し始めた。

誰か、もうなんとかしてくれ!

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