chocolate
一歩踏み出そうとしたら
コツンと貴司にぶつかってしまう。

貴司を見上げると…
泣きそうな顔をしていた。

何かを観ながら。

貴司の視線の先には…

中西課長と奥サンが
信号が変ってこちらに向かって
歩いている姿だった。

眩暈が起こりそうだったのは
太陽のせいだけじゃない。

シャツの裾を掴んでいた私の手を
貴司がそっと握ってきたけど
視線は中西課長と奥サンだった。

ゆっくり貴司が歩きだすから
手が繋がれてしまっているから
一緒に歩くことになってしまう。

…どうしよう。

「あ、南野…と…、…佐久真?」

「課長、こんなところで、奥様と
…デートですか?」

「あ…。まぁ…。」

「俺も、恋人とデートです。」

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