chocolate
…私はちゃんと笑えているのか
泣いているかもわからない。

ただ、奥サンの顔は観れなかった。

髪が長いということだけしか。

また手を引かれてしまったから
貴司についていくことになった。

…どうしよう。

…どうしよう。

「どうしよう。」

信号を渡りきったあと、
このセリフを言ったのは貴司だった。

貴司が少し震えていた。
手が繋いだままだから分かる。

その手をもう片方の手で支えて
今度は私が引っ張って
歩くことにした。

振り返ることはできない。

ただ貴司の手を引いた。

分かってはいても…やっぱり
あの二人を観るのはつらい。
…つらい。

太陽も眩しく照りつけていた。
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