chocolate
いつも中西課長をみていて
わかる時がある。

愛妻家なのだ。

幸せそうに奥サンの話をする。
勝手な片想いで
勝手にいつも失恋している。

…既婚者だから当り前、
なのだけれど…胸が少し痛む。

「亜希はカワイイのにな。」

貴司は立ちあがって、スーツの皺など
軽く叩いたりして、整えていた。

「貴司に言われたら、嬉しいけど。」
「…やっぱりアイツがいいんだな。」

「貴司、いつも、ありがとう。」
私があんまりにも素直に言うから
少し驚いた表情をしていた。

「亜希、鍵、返しといてくれる…?」
書類倉庫の鍵を静かに渡された。

「うん。お疲れ様。」

ここでこうやって貴司に
手を軽く振るのは何度目だろう。

止められない私は…ダメだと思う。

中西課長が好きなのに…。
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