chocolate

静かに車を降りて…
窓から覗きこむ中西課長は
私を観て笑ってくれていた｡

ﾄﾞｷｯとしてしまった｡

思わず､手を振ってしまった｡

…上司に手を振るって…
私何してるんだろう｡

車が静かに動き出して
また小さく手を振った｡
きっと運転席からは観えない手｡

なんとなく､今夜のこのﾄﾞﾗｲﾌﾞを
覚えておこうと思った｡
忘れないように､ではなく､
覚えておこうと思った｡

ﾃﾞｰﾄなんて言えないけれど…
初めて二人きりで話した｡

他愛の無い話をたくさん､
同じ景色を観ながら､ずっと｡

なんだか心地いい風が吹いて
私は深呼吸をした｡
空気っておいしい｡

幸せだなぁってふと思った｡

でも…愛する奥ｻﾝの元へ
帰っていく…中西課長は
今までで一番かっこよく観えた｡