chocolate
貴司の唇は相変わらずおいしい。

私の表情はきっと…
今までしたことのない表情で
貴司を観ているかもしれない。

貴司が触れるところ
唇や舌が這うところは…
私の身体じゃないみたいになる。

この書類倉庫の暗さが
そうさせているのかもしれない。

貴司のスーツのジャケットを
ぎゅっと握りしめてしまう…。

貴司の私を観る目はドキドキする。

貴司はなんで私に
こういうことをするのだろうと
思ったことは無かった。

それよりも、私はなんで貴司に
こういうことを求めるんだろうと
思うことはいつもだった。

中西課長に知れたら、どうしよう
…知れないで…と思うばかりで
貴司との時間を過ごしていた。

貴司にくっついたまま…
時間だけが過ぎるのも好きで
もう…癖になっていた。

私はもう、重症なのかもしれない。
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