chocolate
その言葉を言った時は
貴司は、ふぅん、とだけ答えた。

貴司だったから話してしまったし
貴司だったから聞いてくれた。

それなのに…キスをされた…。

驚いて貴司を観ても
貴司は甘く笑顔を見せるだけで
止めることをしなかった。

私も受け止めてしまっていた。

「もう…戻らなきゃ…。」
私が総務の制服のシャツやスカート…
長めの髪を整えながら言った。

「亜希…俺にしとけばいいのに。」

私の制服についていた
総務・佐久真亜希、のネームプレートと

書類倉庫に来た口実…
床に落ちた書類を屈んで拾って
書類も整えながら貴司を観た。

私は何も答えないまま笑った。
正確には…曖昧に笑った。

きっと貴司も本気で言ってない。
こうやって言葉でも私を
少しだけ気持ちよくしてくれる。

「貴司のファンに怒られちゃうよ。」
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