chocolate
「失礼…します。」

自分のコートとマフラーを椅子に置いて
中西課長のカバンとコートを
受け取って、お店の人に渡した。

貴司は少し離れた席に着いて
お店の女性に同じように
カバンやコートを預けていた。

何気なく貴司を観て
唇をしっかり閉じて、見つめて…
ありがとう、を伝えた。

貴司も唇をしっかり閉じて…
中西課長の顔をわざとチラっと観て
私を観ていた。

こういう目での会話、
社内でもよくしてしまう。
同期の仲の良さからか…
なんとなく、わかってしまう。

きっとさっきのお礼だろう。
うたた寝を起こしてあげたから。

中西課長の荷物を預けてから
私の荷物、コートとマフラーとカバンを
お店の人に渡して、座った。

なるべく…ゆっくり。

緊張して動作が早くなると
おっちょこちょいの私は…きっと
何かを失敗してしまうから。
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