chocolate
013
車の中から観える景色は
夜景だけだった。

中西課長は私を不思議に観て
ヘッドライトを消してくれた。

「綺麗だと思いませんか…?ココ。」

私は努めて明るく話しながら
シートベルトを外して楽にした。

「うん…。」
課長も静かにシートベルトを外して
楽に座って、夜景を観ていた。

車の中は音楽も流れていないで
静かな時間が過ぎていた。

私の少しだけお気に入りの場所。

ココは車でしか来れないから
なかなか来れない場所だけれど。

「あの日、…泣いてたの…
…失恋だったんです。」

静かな沈黙もよかったけれど
中西課長を好きになった時の
話をしていた。

「大好きな男性から突然
別れを言われて…泣いてた時
チョコレイトをくださったんですよ。」

「…そうか。」
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