chocolate
当の私は…何もしなかった。

それなのにそっと中西課長の手が
私の長めの髪に触れられて
肩から…そっと…
抱き寄せられてしまった。

右ハンドルの車だから、左手で…
そっと、抱き寄せられていた。

驚くと言うよりも
当たり前のような感覚で
思わずそっと…目を閉じる…。

中西課長の左胸の心臓の音が
私の右の耳から聞こえてくる。

トクントクントクン…。

いつもより早いような鼓動の音。
少なくとも私よりは早かった。

「課長からチョコレイト頂いて
私、元気になったんです。あの時。」

私のことなのに
不思議な感覚で過ごしていた。

1秒が早く過ぎていくような感覚
…課長の心臓の鼓動のせいかも。

トクントクントクン…。

実は時間は…そんなには
かかってないと思う。
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