chocolate
あと他にも
わかっていることがあった。

…私は、奥サンにはかなわない。

かなうはずなど無いのだけれど。

私は課長の、温かさと強さに
とても惹かれたけれど…
それを形成したのは、奥サンだ。

課長が、課長の荷を下ろせるのは
奥サンの前だけだってことも。

知っているのに…
何度も、唇を重ねてしまった。

「すみません…。」

口癖のように言ってしまった。

この、すみません、は、
私は誰に言っているのだろうかと
自問自答をしてしまう。

どうか、課長が
私を嫌いになりませんように。

私は静かに車から出る支度をして
課長から離れようとした。

課長を奥サンの元へ帰さなきゃ。

「今夜は、ゴハンご馳走様でした。
…気をつけて帰ってくださいね。」
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