chocolate
中西課長には絶対に見せない。
こんな、…泣くなんて…。

静かに車が発進されていて
景色がキラキラ変わっていた。

貴司の優しさなのか…気遣いか
何も聞かれないまま。

車が停まった場所は
…貴司の…マンションだった。

貴司と出逢って初めてかも。

マンションの場所は知っていたけれど
なかに入ったことはなかったのに
サラリと誘われて、驚かなかった。

「コーヒー、今つくるから。
インスタントだけど。チョコ、食べようぜ。」

ふとみた貴司の顔は
少年のような顔をしていた。

チョコレイトの入った白い紙袋を持って
こういうくったくのない笑顔…
安心してほっとする。

「ありがとう。…お邪魔します。」
さっき泣いていたのも忘れて
貴司についていって…

生活感のない、キレイに整った
最低限のものしかないリビングの
ソファーに静かに腰かけた。
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