夏色の約束。~きみと生きた日々~
あおちゃんの頬にそっと触れると、なんだか胸が暖かいような苦しいような、不思議な気持ちになった。
「碧くんのご家族はきっと、先生のところでお話を聞いてるのね」
「……お話?」
「そうよ。今の碧くんの病状はどうなのかとか、いつ退院できるのかとか。そんなことの説明を受けてるのよ」
「……そっか」
お母さんの説明になつは一言だけ、そう返事をした。
そして、
「ねぇ、お父さん、お母さん。ホッとしたらなつ、トイレに行きたくなっちゃった」
そう言って、わざとらしく舌をぺろっとだす。
「そうか。菜摘も菜摘なりに、碧くんのこと心配してたんだもんな……」
「菜摘、ひとりで大丈夫?ちゃんとトイレに行けるの?場所、分かる?」
ふたりの言葉に、なつは首を縦に振った。
「もう、お母さんってば。なつ、もう6年生だもん。場所もきたことあるから分かるし、トイレもひとりで行けるよ」
そして笑ってそう言うと、なつはひとりであおちゃんの病室をあとにした。