夏色の約束。~きみと生きた日々~


「ねぇ、なまえは?」

「なつのなまえ?」

「きみ、“なつ”っていうの?」


男の子にそう聞かれたから、なつは無言で首を振る。


だって、違うもん。


なつの名前は、“なつ”じゃないもん。


「“さとうなつみ”だよ!」


なつが誇らしげに自分の名前を言うと、男の子は、あはっと笑ってから、


「じゃあ、“なっちゃん”だね」


ってなつに無邪気な笑顔を向けた。


「………っ」


その瞬間、自分でもよく分からないけど、なつの胸の奥がぎゅっと痛くなったような気がした。


………あ、それより、この男の子の名前はなんていうんだろう?


< 17 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop