夏色の約束。~きみと生きた日々~
なつ、まだ聞いてないよね。
「なっちゃん」
「ん?」
「あのね」
なつが名前を聞きたいなって思ったのが男の子にも伝わったのか、今度は男の子がなつに言う。
「ぼくのなまえは、あおい。“たかおかあおい”だよ」
って。
あおい……、たかおかあおい。
この男の子によく似合う、すごくきれいな名前だと思った。
「………あお、ちゃん」
自然と自分の口から“あおちゃん”って出てきたことに、なつ自身がびっくりする。
「ぼく、“あおちゃん”?」
「うん、あおちゃん!」
「なんか、おんなのこみたいじゃない?」
あおちゃんはそう言って、少しだけ困ったような顔をする。
ハの字に下がった眉が、なんだかすごく可愛い。
なつはそんなあおちゃんに向かって、にっこりと笑ってみせた。
「なつがいいっていうんだから、いいの!」
「……え、そうなの?」
「うん、そうなの」
「……っ、でも」
「なつは、“あおちゃん”がいい」
まだなにか言いたげなあおちゃんを遮るように、なつは言葉をかぶせる。
………なんでかな。
この時ね、どうしてもあおちゃんのことを“あおちゃん”って呼びたいって、なつの心が叫んだ気がしたんだ。