夏色の約束。~きみと生きた日々~
なつも隣に並んで、ゆっくりとそのきれいな景色を眺める。
「ぼくね……」
隣にいてずっと海を眺めていたあおちゃんが、消え入りそうなくらい小さな声で呟いた。
「ん?なぁに?」
「ぼくね、びょうきなんだ……」
「………え?」
思いもしなかった突然のカミングアウトに、なつの頭が徐々に真っ白になっていく。
………病気、って。
「“心臓病”っていう、しんぞうがうまくうごかないびょうきなんだって」
………しんぞうびょう?
なにそれ。
まだ4歳だったなつは、そんな病気を知らない。
だから、その病気がどんなものなのか、全く分からなかった。
そんななつに、あおちゃんはひとつひとつ教えてくれた。
病気だから、あおちゃんは、お母さんの勧めで空気のきれいなこの島に引っ越してきたこと。
“発作”が起こると、突然息が苦しくなって涙がでてくること。
……今までたくさん、入院したこと。
手術をしたこと。
「ぼく、すごいびょうきでしょ」
そう言うあおちゃんの瞳が、少しだけ悲しげに揺れた。
「……っ、でも、なおるんでしょ?あおちゃんのびょうき、なおるんでしょ……?」
なんだか怖くなったなつは、あおちゃんに問いかける。