夏色の約束。~きみと生きた日々~


「無理なことをお願いしてるのは、重々承知しています。もしこれで、碧の身に何か起こったらどうしようとも思っています。それでも……っ、私は碧の母だから……」


“母として、碧の願いを全部叶えてやりたいんです”


あおちゃんのお母さんは、泣きながら言葉を吐き出した。


「……分かったわ。小さな頃から菜摘もたくさんお世話になったんだものね。何かあったときの責任はとれないけど……おふたりと碧くんが望むのなら、連れて行くわ」


なつはお母さんの顔を勢いよく見上げた。


……嘘でしょ……?


また、あおちゃんの海に行けるの?


「……医師としては、止めるべきなのでしょう。しかし、両親の願いであれば……少しだけですが許可をします」


なつのお母さんに続くように、お医者さんもため息とともに言葉を告げた。


その言葉に、あおちゃんの両親は何度も何度も頭を下げる。


「……父さん、母さん、ありがとう。それに、先生もなっちゃんのお母さんも。また海に行けるんだ……」


それを聞いていたあおちゃんはポツリとそう呟くと、静かに目を閉じる。


その拍子に、あおちゃんの瞳から一粒の雫が流れた。


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