夏色の約束。~きみと生きた日々~
───キーンコーンカーンコーン。
帰りの会も終わって、掃除の終わりを告げるチャイムもたった今鳴った。
なつはその瞬間、ランドセルをとっさに掴む。
早く、早く行かなきゃ。
そんな気持ちが溢れ出したなつは、その場を早く立ち去ろうと拳をグッと握りしめる。
「菜摘ちゃん?」
「……あ、先生」
いざ行こうと思ったのに、担任の先生に呼び止められて、仕方なくその場にとどまるなつ。
今すぐにでも帰りたいのに。
あおちゃんに早く、会いたいよ。
……なのに、先生は目をゆらゆらいろんな方向に揺らしながら、何も言わない。
「……先生?」
なつが不安げに問いかけると、先生はハッとした表情をして、やわらかく微笑んだ。
「今日……碧くんのとこへ行くの…?」
「あ……はい。でも、ひとりじゃなくて、お父さんたちと一緒にですけど…」
「そう……。あのね、先生、今日学校の用事があって病院に行けそうにないの。これ、今日のプリントまとめたんだけどね、持って行ってくれるかしら?」
周りをきょろきょろ見回しながら、そう言った先生。