夏色の約束。~きみと生きた日々~
───コンコン。
午後6時を少し過ぎた頃、なつはお父さんとお母さんと一緒に、あおちゃんのいる島波医大病院へとやってきた。
高い高い位置にある名前のプレートを見上げれば、そこには
“高岡碧”
の文字。
お父さんはそう書かれている病室の扉を、静かにノックする。
30秒もしないうちにガラガラと音をたてて扉が開けられ、中から姿を現したのは、あおちゃんのお母さん。
何に対してかは分からないけど、なんだか不安になったなつは、お母さんの後ろに隠れて手をぎゅっと握る。
でも、そんななつを見たあおちゃんのお母さんは、
「ふふっ。菜摘ちゃん、大丈夫よ。そんなに不安にならなくて。ね?」
ってそっと微笑んでくれた。
「菜摘ちゃん、よくきてくれたわね。あのね、碧ね、ずっと菜摘ちゃんに会いたいって言ってたのよ」
そしてそう言って、あおちゃんのお母さんは少ししゃがんでなつと目線を合わせると、よしよしと頭を撫でてくれた。