夏色の約束。~きみと生きた日々~
そんなあおちゃんに言い返してやりたくなったけど、なつはぐっとこらえて笑顔で笑う。
だってね、今日はあおちゃんの一年に一度の大切な日だもん。
あおちゃんにとっての、幸せな日だもん。
だからなつは、まっすぐにあおちゃんを見つめて、今日一番言いたかったことを伝えた。
「あおちゃん、お誕生日おめでとう!」
なつのその言葉に、あおちゃんの目尻が子犬みたいにきゅっと下がる。
本当に嬉しそうに、あおちゃんが笑った。
「うん! なっちゃん、ありがとう!」
その笑顔に、なつまでもが嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「今日、日曜日でしょ? だからね、俺、なっちゃんに祝ってもらえないと思ってたんだ」
「え、そうなの?」
「うん。でもね、なっちゃんがお誕生日の日一緒に遊ぼって言ってくれたから、俺、本当に嬉しかったんだよ!」
あおちゃんはなつを見て、またあどけない笑顔を向ける。
……もう、あおちゃんのバカ。
そんなに嬉しそうな顔しないでよ。
なつを見て、優しく笑わないでよ。
また、あおちゃんのこと好きになっちゃうじゃん。
……あおちゃん、好きだよ。大好き。
なんて、なつが思ってること、あおちゃんは全く知らないんだろうね。