夏色の約束。~きみと生きた日々~


そんなあおちゃんに言い返してやりたくなったけど、なつはぐっとこらえて笑顔で笑う。


だってね、今日はあおちゃんの一年に一度の大切な日だもん。


あおちゃんにとっての、幸せな日だもん。


だからなつは、まっすぐにあおちゃんを見つめて、今日一番言いたかったことを伝えた。


「あおちゃん、お誕生日おめでとう!」


なつのその言葉に、あおちゃんの目尻が子犬みたいにきゅっと下がる。


本当に嬉しそうに、あおちゃんが笑った。


「うん! なっちゃん、ありがとう!」


その笑顔に、なつまでもが嬉しい気持ちでいっぱいになる。


「今日、日曜日でしょ? だからね、俺、なっちゃんに祝ってもらえないと思ってたんだ」

「え、そうなの?」

「うん。でもね、なっちゃんがお誕生日の日一緒に遊ぼって言ってくれたから、俺、本当に嬉しかったんだよ!」


あおちゃんはなつを見て、またあどけない笑顔を向ける。


……もう、あおちゃんのバカ。


そんなに嬉しそうな顔しないでよ。


なつを見て、優しく笑わないでよ。


また、あおちゃんのこと好きになっちゃうじゃん。


……あおちゃん、好きだよ。大好き。


なんて、なつが思ってること、あおちゃんは全く知らないんだろうね。


< 54 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop