クリスマスはメランコリー
「お待たせしました。支払いは済んでますので…別な場所に移りませんか?」


「…!?」


しばらくして、店員さんが来たかと思ったら手を繋がれて、いつの間にか外に出ていた。


外は寒くて、冷たい風が頬を掠める。


「忘れ物は無いですか?」


慌ただしく店の外に出されたせいで、当たり前の様になっていた重なる手を振りほどいた私は…

「無い、ですけどっ…私は帰りますっ」


と言って、店員さんが持っていたバックを奪う。


「待っててくれたから、期待して良いのかと思ってたけど…ダメだったかな?」


店員さんは少し膨れっ面で言い、ついた溜め息は白い雲になって消えた。


「期待も何も、店員さんの事を何も知らないし…本当はミーちゃん、私の友達目当てでからかってるんでしょ?

…お金も払ってもらう義理もありませんから、きちんと払いますっ」


バッグから乱暴に財布を取り出して、五千円札を差し出す。


「これ受けとって下さい!!」

「だーかーら、いらないって!!」


差し出した五千円札を押し返されて…のやり取りを何度か続けていたら、チャックを締めていなかったバッグから財布が落ちて、歩道に小銭やカードがをばら蒔いてしまった。


< 5 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop