バラとチョコレート(X'mas 仕立て)


「あのね、諭・・・」


「何?」のんびりとした声が聞こえた。


「ううん、何でもない。ごめんね、疲れてるのに。メリークリスマスって言いたかったんだ。明日もお互い仕事頑張ろうね。落ち着いたらまた連絡するね。うん、じゃあ、また。おやすみ」


一方的に話して電話を切り、ふぅとため息をついた。


「諭に会いたい」そう言いたかったのに、ノドの奥で留まってしまった。


昨日から不思議な少年が現れて、バラの花を1輪づつ私にくれることも諭に話してみたかったけど、怪しげな男の人ならともかく、人懐っこくてかわいらしい小学生だし、変な心配はなさそうだ。
 
 

花瓶の中のバラは8本に増えていた。


あの後、夕方に少年が店に現れ、帰宅すると昨日と同じようにドアノブに掛けられたビニール袋の中にバラが1輪入っていた。


「passion=情熱」「truth=真実」新たに増えたカードを眺めた。



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