バラとチョコレート(X'mas 仕立て)
それから、休日は2人でおいしいものを探す旅に出るようになり、いつの間にか、隣にいることが当たり前になっていた。
「諭のことが好きみたい」
勇気を振り絞ってした告白の答えはうんと頷くだけだった。
それから何となく、恋人関係になったけれど・・・諭は無口な人だった。
一緒に出掛けても話をしているのはいつも私ばかりで、彼は微かに微笑みながら相槌を打つだけだった。
食べる物に関しては嬉々として、自分の感想を述べるのだけれど。
そういえば、諭から「好き」とか「愛してる」とか言われたことってないな。
諭との思い出を振り返ってみると落ち込むこともしばしば。
料理学校を卒業した諭は、郊外にあるリストランテで働くことが決まり、店の近くに物件を見つけて引っ越した。
同じ都内に住んでいるのに、諭の家に行くまでに電車を乗り換えて約1時間。
お互い忙しく、会う時間は日に日に少なくなっていった。
そんな生活を続けて1年。
恋人たちにとって、1年の内に最も重要なイベントのクリスマスは今年も当然のようにお互い仕事だ。
もっと諭と一緒にいたい。
諭が作ったパスタが食べたい。
諭のぬくもりを感じたい。
募る思いを言葉に出来なかった。
付き合って3年経つのに、相変わらず私を「カヲルさん」と呼ぶ諭に少し感じる距離。
年上だから、甘えられない。