バラとチョコレート(X'mas 仕立て)


扉を開き、外に一歩踏み出すと、冷たい朝の空気を思い切り吸い込んだ。


アパートの階段を降りると、郵便受けの前に小柄な少年が佇んでいた。


白い息を吐きながら、にこにこと満面の笑みを私に向ける。


少年に愛想笑いを返しながら、階段下に停めてある自転車に跨る。


この辺に小学校なんてあった?見かけない子だなと不思議に思っていると、


「お姉さんが朱見カヲルさん?」


と私に駆け寄ってきた。


「何で私の名前・・・」


「はい!メリークリスマスイヴイヴ!!」


そう言い終わる前に、少年は私の前にさっと1輪のバラを差し出した。


え?何?突然のことに驚く。


少年はまたにっこりと笑うと、私の右手にバラを握らせて、「じゃあ、まったね~」と手を振りながら去って行った。


呆然としたまま、手元を見る。


ラッピングされた赤いバラ、オリーブ色のペーパーと真っ赤なリボン。


中には「thanks」と印字されたカードが入っていた。


何かお礼されるようなことした?その前にあの少年は誰なの?





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