§ スウィート・クリスマス§
直が余裕な理由を知ったのは、待ち合わせたホテルのロビーでのことだった
コンクールの表彰が行われていたためか、ロビーはその関係者や家族などでごった返していた
私と直は、別々にホテルへ向かったため、この人ごみ、直の姿を探すのは困難で…
「困ったな…」
直に通じないスマホを耳から離してため息をついた
「あれ? 咲和ちゃん?」
後ろからの声に振り向くと…
「川端さん!」
タキシード姿の川端さんがいた
うわ…カッコいい…
始めてみる、正装した川端さんに少し見惚れてしまった…
「なに? 咲和ちゃんもコンクール見に来てたの?」
「え?! あ、いえ、待ち合わせしてるんです…
川端さん、もしかして審査員だったんですか?」
「あぁそうだよ…なかなか面白いコンクールだったよ
咲和ちゃん、これからお店の子らとパーティなんだ 朝まで騒いでるから気が向いたらおいでよ」
胸ポケットから、出したそのパーティのチケットを私に差し出した
「あ、ありがとうございます 行けたら、行きますね」
たぶん、いや、行けないことわかって、曖昧な返事をしてしまう
「うん、待ってるよ」
笑顔で手を振り、クルリと踵を返し川端さんを待っていた若い男女の輪に向かって行った
「パーティかぁ…」
手の中にあるチケットを眺めて呟いた
こっちでもパーティやる人はやるんだね
「なに? 咲和、パーティ、行きたかったの?」
チケットを見ていたから、私の傍に拓くんが近づいてたことなんて気が付かなかった
「た、拓くん…」
黒のタキシード姿に、手にはクリスタルの盾…
「あ! コンクール受賞したのっ?!」
「あぁ、4位だけどな」
持っている盾に視線をやり嬉しそうに笑う
「スゴいっ! おめでとう!」
「あぁ、ありがとう」
そう言って、
「咲和も、そのドレス、イケてんぞ」
私の傍に来て耳元に囁く
「ひゃっ…ちょっと!!」
拓くんの息が耳にかかり、くすぐったかった
「ぷっ、おもしれっ あ! 咲和、なんでオレがつけた痕、隠すんだよっ」
え?痕?
拓くんの視線は、私の首筋へ…
「え…誰だって隠すわよ!こうゆうの見えちゃったらマナー違反でしょ!」
拓くんに付けられた痕に、直に上書きされたから、余計赤くなってるし
今日のドレス、ベアトップだし首筋丸見えなんだもん
だから
首筋が隠れる光沢あるボレロと大振りネックレスを着けた
「ソレ、奥さんたちが来たら脱げよな、オレの恋人だって見せつけるのに必要だからな!」
なっ! そういう意味で、わざとつけたんだ!!なんか、ムカつくっ!!
絶対、脱いでなんてやらないんだから!