§ スウィート・クリスマス§
拓くんとわやわや言い合いしてると、人ごみの中、直の姿が見えた
「あ、な……ぉ…」
すぐ、隣にはスラリとした美人さんが寄り添ってて…
あ…あの人…
スラリ美人に、私は見覚えがあった
そう…
ジュリアさんのお店で手伝った時、直が連れていた人だ
結局、彼女が何者なのか聞けなかったんだっけ…
2人仲良く、話をしながら笑いながら近づいてくる
「ふっ、アニキもやるなぁ… あんな美人どこで見つけたんだか…」
ニヤリとした拓くんが私を見つめる
2人を見たくないけど、どうしたって2人とも目立つから目が言ってしまう
イケメンな直と美人な彼女
まわりにいる人も、チラチラと二人に目がいってる
「ごめん、遅くなって」
ずるい直、そんな笑顔を私に向けるなんて…
私が、嫉妬してるコトなんてこれっぽっちも思っていないだろうな…
「拓、わりぃけど、やっぱ今日は咲和貸せねぇわ」
私の瞳を見てから、視線を拓くんに移す
「げっ! なんだよ!ソレ! 今んなって逃げんのかよ!」
拓くんの顔が、怒りの顔に変った
「ちげーよっ オレもお前のために、って思って数時間くらいガマンしようとしたけど
やっぱ、ムリ!!
勝手にオレらの寝室入って、オレの咲和にキスしやがって、おまけにキスマークまでつけられたんじゃ
いくら、寛大なオレでも許せねぇからな
ほんとはぶん殴りたいけど、そこはやめとく
オレは、咲和が他の男としゃべってるのもムカつくほど、咲和に惚れてんだ
だから今日は、諦めろ」
「……」
唇をギュッと結んで黙って聞いている拓くん
「変わりと言っちゃなんだが、彼女、マヤが事情を話したら引き受けてくれた
今日は、マヤと一緒に行ってくれ」
「よろしくね、拓」
直の傍にいたマヤさんが、拓くんの腕に絡みついた
「チッ…やっぱアニキには敵わねぇな…わかったよ…」
マヤさんの腰に手を回した拓くんは、踵を返して私たちに背を向けて去っていった