記憶
「ま、まぁ…これだけ頑張ったんだから。
今日はきっと行けるでしょ!」
「…だといいな」
あたしはそんな芹奈の言葉を信じ、奇跡が起こることを願いながら、4講義目に挑んだ。
クラスメイトは皆ちゃっかり勉強済みのため、楽々合格をもらって行く中、あたし以外にもう一人、懸命に暗記プリントとにらめっこをしている人がいる。
「哀れだね。
…隼人…」
芹奈は本人を見ながらそう呟くと、合格証をピラピラともって隼人のところに向かっていった。
―…あたしは、あんなことがあった手間、隼人と易々と話すことが出来ない。
“忘れる”
そう誓ったけれど、やっぱりまだ…大翔の居ない今でこそ、少し後ろめたさがあったりする。
早く、いつも通り友達にならなきゃなんだけどね。
あたしは結局その様子をしばらく見ることにした。