ド天然!?魔女っ子の秘密
あの魔法は、あたしの魔力が完全な状態でもできなかった魔法。

それなのに…あたしの魔力が半減している今の状況で、できるとは思い難い。やはり、あの時魔力を失ったことはとても大きかった。大きすぎる痛手だった……


だけど、それでも、やるしかない。

不安もあるけど、それ以上に、取り戻したいと思う気持ちの方が大きい。


誰よりも優しいあの人を取り戻したい。

あたしはまた、あの陽だまりのように暖かかった日々の中で生活していたい。

初めて"仲間"だと言ってくれて、居場所まで与えてくれた人々と一緒に楽しく毎日を送っていたい。

生まれて初めての学生生活だってまだまだ送っていたい。楽しみたいよ。


それが、今のあたしの願い。


あたしは仕事を終えれば、学園を去ることになる。

だからこそ、いつか皆と離れる日が、他の生徒よりも早く訪れるからこそ、

あたしは、あたしのことを"仲間"だと心から思ってくれる人々と共に生きていたいんだ。

そんな日々を大事にしていきたいの。

あたしの大切な思い出だから。一生モノの思い出だから。


それにね、あたし、思うんだ。

学園に来てから随分と欲深くなってしまったけれどね。


もう叶わなくてもいい。

もう届かなくてもいい。

もう一度、もう一度だけでいいの。


『由良』

って、翔太に名前を呼んでほしい。

それだけで、あたしは充分だから。


それに…あたし、まだ言ってないんだよ?

翔太に、好きだ、って……

それを言うまで、あたしは死なない。

ううん、死ねない。


だから、必ず取り戻す。

恐ろしい程に優しすぎたあの日々と、大好きな人を。



翔太………
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