大事なものは、いつでもそばに
「ねぇ、ちなみ?」

学校から駅までの道のりを並んで歩いていると、愛佳はふと立ち止まり、私の名を呼んだ。

「なぁに?」

彼女より2歩先を歩いていた私は、立ち止まり、くるりと振り返った。

「ずっと聞こうと思ってたんだけど…」

「何を?」

いつものように、当たり障りない笑顔で私は尋ねた。

「ちなみ、恭介くんのこと、好きだよね?」

彼女のその一言に、私の瞳孔が、ほんの一瞬だけ開いた。しかし、すぐにいつもの笑顔に戻る。

「なんで?」

「だって、いつも目が恭介くんを追いかけてるじゃない」

私は次第に表情を曇らせ、眉をひそめた。


< 8 / 56 >

この作品をシェア

pagetop