ティラミス
360円のティラミス



「ティラミス食べたい」


本の返却口で私はその言葉に思わず、「私も食べたい」などと心の中で返事をしてしまっていた。

師走。
ジャンパー、マフラー、手袋と体感気温が下がる毎に着込んでいたらいつの間にかもう12月に入っていた。

そんな、街中にイルミネーションが輝く季節に、私は市立図書館でアルバイトをしていた。
言っておくがお金がないわけではない。
好みのイケメンが働いているわけでもない。

一応、私は図書館司書を目指しているから。
だからどうせ働くのなら早くから図書館の仕事の雰囲気に慣れておこうと思ったわけで。


ティラミス事件があったのは返却された本を整理している時だった。

「アルジャーノンに花束を」

中学生のときに読んだ懐かしい題名に目を惹かれて思わずパラパラと捲った。
最後のシーンでボロ泣きしたっけなぁ、なんて思いながら捲っていたら、そこにティラミスはあった。



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