ティラミス
かみさま
「慧海さん。」
12月15日。
クリスマスが10日後に迫った日にも、滝沢樹はやはり図書館に来て私に声をかけてきた。
「慧海さんは、俺みたいな人のこと、どう思います?」
なんとも抽象的な質問。
滝沢樹の純粋な瞳がチラチラと揺れていた。
私は棚に戻そうとしたまま止まった手を見て、暫し考えた。
戻そうとしていた本は「アルジャーノンに花束を」だった。
最近この本を借りていく人が多いな、と思った。
「鋭くて、正しいと思う。」
滝沢樹のような人、は。
「私たちなんかよりも、ずっと物事の本質のようなものが見えていて、それを飾らずにさらけだせる。私たちよりも、ずっとずっと、正しい人間として生きてる。」
私の勝手な意見だと、そう付け加えておけば滝沢樹は困ったように笑った。