ティラミス



それから10日間、滝沢樹は図書館に来なかった。

けれどクリスマスの日、滝沢樹は図書館にやってきた。
借りていた本を返しにきたようだ。
鼻の頭を赤くして、いつものように赤いマフラーを巻いていた。

返した本は「アルジャーノンに花束を」。
彼がこれを借りるのは二度目だ。

滝沢樹は私に本を渡すと、二ヘラ、と笑って何も言わずに出て行った。
手に残ったのはずしりと重いアルジャーノン。

表紙に描かれた花束を見て、もう一度、読み直してみようかと思った。


「あの男子高校生くん、帰っちゃったの?」

「はい。」

司書の先輩は不思議そうな顔をして、自分の仕事に戻っていく。




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