ティラミス
『世界的フルート奏者の滝沢樹さん。彼は障害をもっており、精神遅滞の症状があります。そんな彼の演奏の特徴はその音の純粋さです。まっすぐな彼の音楽が、音楽が本来持つ楽しさを私たちに思い出させてくれます。』
滝沢樹のテレビドキュメンタリーでは司会者がそんなことを言っていたように思う。
満席の大ホールに拍手がわく。
私も手を叩きながら、彼のことを考えていた。
黒いタキシードを着た滝沢樹がステージに出てくる。
ヘラヘラと、初めて会った日のように笑っている。
覚束ないその笑顔に、懐かしさを感じた。
チャーリイになってまでも、どうして彼は私に会いにきたのだろうか。
恋だったのだろうか。
感謝だったのだろうか。
懐かしさだったのかも、しれない。