ティラミス
コンサートホールを出たときには、もうクリスマスが終わりそうな時間帯だった。
一年前と同じように、雪がチラチラと降っていた。
綺麗だと、思った。
目をつぶる。
顔に落ちる雪の冷たさに、彼のフルートの音色を思い出す。
彼はクリスマスの雪を見て、どんな音色を響かせるのだろう。
神様は、彼だ。
音楽の、神様。
今年のクリスマスも、私はやっぱり360円の安っぽいティラミスを食べた。
そうして、彼のまっすぐなフルートの音色を思い出した。
了